かき氷は「ふわふわ」でなくてはならないのか。 「氷がふわふわで、口の中に入れるとすうっと溶けていきます。絶品のかき氷です!」 このフレーズを、今まで何度耳ににしただろうが。そして何度口ににしただろうか。
かき氷は「ふわふわ」でなくてはならないのか。
かき氷は「ふわふわ」でなくてはならないのか。
「氷がふわふわで、口の中に入れるとすうっと溶けていきます。絶品のかき氷です!」 このフレーズを、今まで何度耳ににしただろうが。そして何度口ににしただろうか。
薄く削られた氷に美味しい蜜がかけられて、それが体に溶け込んでいくような口溶けはもちろん最高だ。 けれど忘れてはいけない。美味しいかき氷に「ふわふわ」は必須ではない。
思い出して欲しい。真夏の炎天下の下、ちょっと粗めのかき氷がカラカラの喉を通っていく爽快感を。
体験した頃がなければ想像してみて欲しい、程よい氷のシャクシャクとした歯ざわりと、美味しく炊かれた小豆が口の中で混ざり合い、喉を通っていく甘美な瞬間を。
グルメかき氷
2011年以降から注目を集め始めた「グルメかき氷」には「美味しい良質の氷を使って、限りなく薄く氷をふわふわに削る。」「生の果物を使ったシロップや、高級な砂糖や抹茶などの食材を使用している」「見た目をデコラティブにする」という3つの要素を満たしているのもが多い。 美味しい果物から作った新鮮なシロップは、色のついた砂糖水にくらべると豪華で、ふわふわに大きく盛り付けた氷や、クリームやエスプーマの登場は、とても印象的で心踊る。
最高の美味しさ
しかし、かき氷の楽しさや美味しさは「薄くて、ふわふわで、口溶けが良くなくてはダメ」ではないということをぜひ知っていただきたい。 もともとかき氷は、蒸し暑い日本の夏に体を冷やすために考えられた機能食であり、真夏に刃物で砕いた氷を食べたことから始まる。刀で砕いたのだから、もちろん氷の粒は荒いだろう。 しかし、夏でも十二単を着込んだ貴族たちの体を冷やすには、荒い氷を咀嚼して飲み込まなくては体の中から冷やすことなどできない。 夏の球場で人気の「ぶっかき氷(かちわり)」も、炎天下ですぐに溶けてしまわないように、粗めの氷を甘く味付けしたものだが、暑い球場で食べるそれは、言葉にできない最高の美味しさだ。
ファストフードである
九州・中国地方になると、ふわふわを通り越して、まるでパウダースノーのようにサラサラに削った氷を蜜と混ぜ込むタイプのかき氷が提供されている。 長崎地方のご当地氷として有名な「食べるミルクセーキ」がまさにこのタイプで、卵と牛乳と砂糖にかき氷を混ぜ込み、シャーベット状にして提供する。液体に混ぜ込んでも溶けない氷を削らなくてはならないので、ふわふわの氷では溶けて水っぽくなってしまう。キンキンに凍った氷を粉のようにサラサラに削る必要がある。 坂の多い長崎で、毎日坂を上り下りして大汗をかいている人のために作られたのがこのメニューで、まずはひんやり氷を楽しみ、最後にはゴクゴクと飲み干してまた仕事に戻っていけるファストフードなのである。
サラサラの氷も、ふわふわの氷も、シャリシャリの氷
サラサラの氷も、ふわふわの氷も、シャリシャリの氷も、どういう蜜にあわせるか、どういう食べさせ方をしたいかが大事なのだ。そしてそこが店主の腕なのだ。 多分同じシロップを使ったとしても、店主の作り方によってかき氷の味は変わってしまう。氷はとても繊細で、扱いが難しい食べ物だ。 生の果物をなかったシロップは、もちろん最高に美味しい。 けれど、砂糖と水で作られたみぞれや、キラキラと輝く昔懐かしい色付きシロップをかけた氷を、「食べ終わってしまうのが惜しくてしょうがない」と思うことがある。あれは一体なんなんだろう。
たくさんの氷に
どんなかき氷が自分は好きなのか。どんなかき氷を自分の体が求めているのか。 日本にはいろんな味の、いろんな形のかき氷がまだまだたくさんあるはずだ。 たくさんの氷に出会って、たくさんの楽しみ方を見つけて欲しいと思う。